かっぱえびせん徹底追跡


やめられない、とまらない、という。確かに、かっぱえびせんの「かっぱ」は奥が深く、調べだしたら最後、底なしの海底に潜ってしまった。

かっぱえびせんの誕生は1954年(昭和29)のこと。一説によると当時流行していた人気マンガ「かっぱ天国」にちなんでのネーミングだったらしい。え?キャラクター商法は仮面ライダースナックが最初じゃなかったの?さっそく、カルビーのホームページを訪ねてみた。そもそも「カルビー」ってなにもの?ついでながらその謎を解明しておこう。

カルビー

“カルビー”とは、カルシウムの“カル”と、ビタミンB(ビー)のビーを組み合わせてつくられた言葉です。(同社HPより)

かっぱあられ
ふむふむ。健康志向だね。ところが・・・この社名、実はかっぱえびせん誕生の年にネーミングされたものだった(松尾糧食工業株式会社→1954年カルビー製菓株式会社→1973年カルビー株式会社に変更)。ということは、カルビーってもともと、かっぱえびせんの会社だったんだ!もっとも当初はえびせんではなく「かっぱあられ」という商品名だったらしい。ちなみに、小麦粉であられを製造することにはじめて成功したのも同社で、加えて瀬戸内海の小エビを押し花のように丸ごとまぶしたというのだから、口にした消費者の驚きようは想像に難くないだろう。

なぜ?せんべい

しかし、ここで大きな疑問が!えびせんは、えびえんべいの略だと思うのだけれど、あれって実際、せんべいなの?なぜ、「あられ」を「せんべい」に変更したのか?大ブレークした「やめられないとまらない」のCMソングとともに、このあたりの事情がとっても気になるところ。

清水崑画伯という人物

それはさておき、前出の人気マンガ「かっぱ天国」に調査のターゲットを移行。この作者はいったい誰なんだろう?答えは故・清水崑(しみずこん)という人物。大村崑ではない。彼については、黄桜酒造が提供する黄桜記念館にプロフィールが記載されていた。ん?黄桜といえば・・・「カッパッパ、ルンパッパ、キーザクラー」(かっぱの歌)で知られる清酒メーカーではないか。そこになぜ?

黄桜酒造も「女かっぱ」戦略を

実は清水崑画伯の「女かっぱ」とキャラクター契約したのは、カルビーだけではなかったのだ。その名も黄桜酒造。「ほのぼのとした雰囲気の崑カッパと<誰にでも親しめるおいしい日本酒−黄桜>の精神に通じるものを感じ、ブランドキャラクターとしての使用を申し入れた(同社HP)」のだという。待てよ、とすると、あのえっちな黄桜かっぱとカルビーのそれは同じ穴の・・・かっぱだったのか。ちなみに、僕らが親しんでいる黄桜のキャラクターは2代目にあたる小島功氏のもの。菜単に本人のエピソードが掲載されているが、もともと彼は清水崑画伯の側近だったようだ。画伯が他界した後「せっかく崑さんが作った<女かっぱ>を継承しないでどうする!と横山泰三さんにしかられ」2代目を就任したのだという。

「女かっぱ」はフェミニズムの象徴?

日本には浮世絵という独自の女性画文化があり、小島功氏の作品はその系譜上に位置づけられている。「現代の浮世絵師」といわれるゆえんだ。菜単にアップされている「女かっぱ」カレンダーを覗いてほしい。つまらないH画像よりソソられるものがある。すでにカルビーとは思いっきり関係ない話になっているが、脱線ついでに・・・昭和30年代、かっぱえびせんや黄桜など「女かっぱ」成功の裏には、フェミニズム(女性尊重・男女同権主義)の追い風があったようだ。大正デモクラシーに竹久夢二がいたように、この時代には清水崑や小島功がいたのだろうか。いずれにしても女性主役の企業イメージ戦略が功を奏した?ようである。

かっぱ川太郎の謎

さて、肝心の清水崑画伯に話を集める。彼の代表的仕事が昭和28年から「週刊朝日」に連載された「かっぱ天国」であることは先に紹介したとおりだ。が、実はもうひとつ「かっぱもの」を描いていたのだ。それが「かっぱ川太郎」である。マンガの内容はわからない。が、これは通称「かっぱ寺」と呼ばれる曹源寺にまつわる河童伝説のことであろう。また「かっぱ川太郎」は清水崑原作のクレジットで映画化(三井芸術プロダクション)されている。なお、川太郎のモデルは雨合羽商であり、曹源寺(東京都台東区松が谷)の付近には「合羽橋道具街」もある。一種の町おこしプロモーションだったのか。もっとも最近では「かっぱ風呂」のように人工的なかっぱ伝説が全国あちこちでつくられているが・・・。

結論!かっぱえびせんのスゴさ

ながながと探求してしまったけれど、ここらで結論を。かっぱえびせんは一種のキャラクター商品でありながら、キャラクター作者の死後も、ネーミングだけは生き続けているという恐るべきアイテムだったのである。しかし…ここまで探索しながら、結局なぜかっぱなのか、わかったようで、まったくわからない。やはりこれはタダモノではなかった。