東京大学史料編纂所ができるまで
東京大学の研究所のひとつで、日本史の史料の編さんと刊行を行っている東京大学史料編纂所。こちらの設立にも塙保己一の業績が関係している。編纂所の歴史は江戸時代にまでさかのぼる。その前身となった研究機関が、寛政5年(1793年)、塙保己一が幕府の援助を受けて開設した和学講談所である。保己一の指揮のもと、莫大な資料の収集、編さんが行われ、それらが『群書類従』として刊行さていった。また、歴史研究に関しては『史料』としてまとめられ、この分野が、東京大学史料編纂所に引き継がれていったのである。史料は明治期に『大日本史料』として刊行が開始され、今日も東京大学史料編纂所でその事業が継続されている。最初に要約を記し、後に史料を原文で引用していく形式は、和学講談所の『史料』を継承したものであり、塙保己一が確立したものと考えていいだろう。このように、保己一の研究成果は、データだけではなくその手法にいたるまで、今日も研究の現場で生かされているのである。